NAD+ IV とは？

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド（NAD）は、ヒトの細胞内で発生する代謝プロセスと反応における重要な構成要素です。NADは多くの細胞イベントに重要です。これには、解糖（グルコースのピルビン酸と水素への分解）、クエン酸サイクル（アセチルCoAの酸化による炭水化物、タンパク質、脂肪の蓄えたエネルギーの放出）、脂肪酸の分解、DNA修復、炎症反応などが含まれます。NADがないと、これらのプロセスは発生しません。NADは体の代謝プロセスに影響を与えるため、酸化または還元が起こり、酸化された変種はNAD+と呼ばれています。

NAD+の合成方法

NAD+は、人体内で合成される主要な方法が2つあります。キヌレニン経路（キヌレニンパスウェイ）は、NAD+が必須アミノ酸トリプトファンから合成される経路です。この経路では、トリプトファンから形態キヌレニンという生成物が形成されるため、酵素であるトリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ（TDO）およびインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ（IDO）がトリプトファンの酸化的クレアバージュを促進します。形態キヌレニンが形成された後、さまざまな酵素、3-ヒドロキシアントラニル酸3,4-ジオキシゲナーゼ（3-HAAO）を含む酵素によって、NAD+へと変換されるまで、いくつかの酵素反応が発生します。

第二の経路は、サルベージ経路（Salvage Pathway）として知られ、ニコチン酸、ニコチンアミドモノヌクレオチド、およびニコチンアミドの消費中にNAD+をリサイクルします。酵素ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ（Nampt）は、ニコチンアミドをニコチンアミドアデニンモノヌクレオチド（NMN）に変換し、それが別の酵素であるニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ（Nmnat）を使用してNAD+に変換されます。さらに、ニコチン酸は、酵素Namptを介してNAD+合成の前駆体として機能でき、ニコチン酸モノヌクレオチド（NAMN）を生成し、それがNAD+に結合します。NAD+合成のための複数の経路の存在は、それが人体内での重要性を強調しています。

人体内でのNAD+の重要性

前述のように、NAD+は人体内のさまざまな代謝プロセスで重要な役割を果たします。体内のNAD+の不足やバランスの乱れは、これらの生理学的な機能を損なう可能性があります。

NAD+のレベルは年齢とともに減少し、エネルギーレベルの低下、認知機能の障害、および疾患への感受性の増加につながります。低いNAD+レベルに関連する疾患には、神経変性疾患、代謝異常、およびがんが含まれます。サプリメントを通じてNAD+レベルを増加させることは、エネルギーレベル、認知機能、および全体的な健康の改善に期待が持たれています。

以下は、NAD+に依存する多くの生理学的プロセスのいくつかです。

ゲノム安定性

毎日、体内は細胞DNAに損傷を引き起こす反応性酸素種（ROS）と反応性窒素種（RNS）を放出します。発がん物質、化学的変異原、放射線などの外因性要因もDNA損傷に寄与する可能性があります。これが発生すると、ゲノムの不安定性が生じ、がんの発症リスクが増加し、細胞の加齢が促進されます。

細胞DNAの損傷を最小限に抑えるために、体内にはDNA損傷応答（DDR）として知られるプロセスがあります。このプロセスは体内の損傷を検出し修復する役割を果たします。体内のNAD+量が低い場合、DDRプロセスは障害され、細胞DNAへの損傷が増加する結果となります。

遺伝子発現

これは、細胞のDNAに格納された遺伝情報が、人体内で特定のタンパク質や物質を生成するために利用されるプロセスを指します。この複雑なプロセスは、個体を定義するすべての身体的特徴の発達に責任があります。これには髪の色や肌の色など、他の個別の身体的属性も含まれます。遺伝子発現の研究は、人間の生物学の理解において重要であり、さまざまな遺伝病の治療と予防に広範な影響を与えています。

遺伝子発現が体内で成功裏に発生するメカニズムの1つは、ヒストンと呼ばれる生成物を修飾することです。ヒストンの修飾はNAD+に依存するプロセスです。NAD+レベルの不足は、ヒストンの修飾を妨げ、遺伝子発現を妨げる可能性があります。NAD+の不足は、細胞DNAのメチル化を引き起こし、遺伝子が適切に発現しないようにする可能性もあります。これは遺伝子の沈黙として知られています。

免疫と炎症

研究によれば、人体内のNAD+レベルは感染時の免疫反応の程度と効果を決定する上で重要な役割を果たしています。感染時の高いNAD+レベルは、マクロファージでの酸化的リン酸化を促進し、感染性物質を中和する能力を向上させます。

さらに、NAD+は感染プロセス中に抗炎症作用を発揮し、高い細胞内NAD+およびその前駆体のレベルがある場合、腫瘍壊死因子アルファ（TNF-α）やインターロイキン-6（IL-6）などの炎症マーカーの発現を減少させます。これらの結果は、NAD+が免疫反応を調節する重要な役割を示し、感染症と戦うための治療対象としての潜在的な可能性を示唆しています。

エネルギー代謝

人体内のいくつかのエネルギー代謝経路は、効果的に機能するために共酵素としてNAD+を必要とします。NAD+は、糖解経路の中でのグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素（GADPH）や乳酸脱水素酵素（LDH）などの主要な酵素の触媒反応を促進します。

クレブスサイクルでは、NAD+はαケトグルタル酸脱水素酵素、イソクエン酸脱水素酵素、およびマレート脱水素酵素の補酵素として機能します。同様に、肝細胞でのアルコール代謝もNAD+を補酵素として依存しています。体内のNAD+の不足は、これらの代謝プロセス、糖解、三炭酸回路、酸化的リン酸化、脂肪酸酸化、エタノール代謝を含む、エネルギー生産の障害を引き起こす可能性があります。

循環リズム

NAD+レベルは循環リズムと密接に関連しています。生体時計や循環リズムとしても知られるこの24時間サイクルは、睡眠-覚醒のサイクルを調整します。この内部時計は自然な内部プロセスであり、環境と体の機能を同期させるために光と闇に反応します。

循環リズムの正確さと効果は、部分的にNAD+の細胞レベルに依存しています。NAD+の不足は循環リズムを妨害し、昼間の眠気、不安定な睡眠、ホルモンの不均衡、気分の変動などの影響を引き起こす可能性があります。

心血管機能

心臓は人体で最も代謝活性の高い臓器であり、絶え間ない鼓動のためです。研究によれば、正常なNAD+レベルは心臓の代謝活動を維持するために不可欠です。さらに、一過性脳虚血発作や心筋梗塞などの重大な心臓イベントの場合、正常なNAD+レベルは傷害からの回復に役立ちます。他の研究では、NAD+の不足が心臓の肥大や線状線状化などの心臓障害を引き起こす可能性があることが示されています。

腎臓機能

人が年をとると、腎臓の機能が低下する傾向があります。高齢者のNAD+レベルの低下は、腎臓機能の低下と関連している可能性があります。研究によれば、NAD+のサプリメントは急性腎損傷に対する保護を増強することが示されています。NAD+サプリメントはまた、急性腎損傷の後に腎機能を改善できるプロスタグランジンE2の放出を促進します。

肝臓の機能

肝臓の最適な機能は体内の正常なNAD+レベルに依存しています。NAD+経路の酵素は、非アルコール性脂肪肝症、肝線状化、非アルコール性脂肪性肝炎などのさまざまな疾患から肝臓を保護する重要な役割を果たします。多くの研究は、NAD+を個人に補充することで、肝臓の全般的な健康を向上させ、有害な疾患から保護し、肝臓のけがの後の再生能力を高めることが示されています。

神経機能

研究によれば、重大な神経疾患発作（例：脳卒中）の後、NAD+およびその前駆体は脳のニューロンを保護する役割を果たすとされています。正常なNAD+レベルを維持することは、脳のニューロンの適切な機能と生存に重要です。さらに、NAD+サプリメントはアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療と予防に潜在的な可能性を示しており、ただし、現在も研究が進行中です。

IV NAD療法の利点

NAD+は体の主要なプロセスに重要な役割を果たします。NAD+レベルが最適であることを確保することは重要であるため、NAD+欠乏症の兆候（皮膚炎、認知症、下痢などを引き起こすペラグラなど）は、追加のIV NAD療法を必要とする場合があります。NAD+欠乏症の兆候に加えて、個人が静脈内NAD+補充を検討する理由には、以下のようなものがあります。

中毒療法

IV NAD+療法は、中毒の管理を支援するために頻繁に使用されます。オピオイド、アルコール、化学物質、または処方薬の依存症からの離脱中の患者は、IV NAD+療法から利益を得る可能性があります。これは、離脱症状の重症度を軽減し、渇望を減少させるのに役立つ場合があります。NAD+がこの能力をどのようにしているかのメカニズムはまだ研究中ですが、IV NAD+が薬物を体から排出するのに役立つと考えられています。

認知機能の向上

前述のように、NAD+は脳に対して保護的な効果と刺激的な効果を持つことがわかっています。そのため、IV NAD+療法は、記憶の向上、集中力と焦点の向上、脳の再生の促進、および全体的な神経機能の改善を促進する可能性があります。IV NAD+補充がこれらの効果をどのように生じるのかの正確なメカニズムは、継続的な研究を通じてまだ調査中です。

慢性疲労

慢性疲労症状や低エネルギーレベルを持つ人々の治療に、IV NAD+療法が使用されています。 NAD+は、ヒトの主要なエネルギー源であるアデノシン三リン酸（ATP）を生成するために貢献する、解糖途中および三羧酸回路途中の重要な補因子です。 NAD+サプリメントを投与することで、ATPの生産が増加し、エネルギーレベルの向上と疲労の軽減につながる可能性があります。

アスリートのパフォーマンス

NAD+サプリメントがIV経路を介して投与され、ATPの生成に対するその役割のため、アスリートによってアスリートのパフォーマンス向上に使用されています。 NAD+サプリメントの投与は、競技やアスレチックイベント中のエネルギーレベルの向上、認知機能の改善、反応時間の短縮につながる可能性があります。さらに、研究によれば、NAD+サプリメントは筋肉の発達と修復に役立ち、筋肥大や増殖を促進する可能性があります。

疼痛管理

NAD+療法は、その体内での抗炎症作用から、疼痛管理の方法として検討されています。炎症と疼痛は密接に関連しており、NAD+の使用は炎症を軽減し、一部の痛みの緩和を提供するのに役立つ可能性があります。研究は継続中ですが、NAD+が疼痛の管理方法としての効果はまだ確定的ではありません。